CANDY CANDY BOOTLEGS!!
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『キャンディ・キャンディ』の年表とキャラクターの生年月日

2/12/2022

 
『なかよし』1977年6月号付録「なかよしまんが新聞・キャンディ百科大特集号」ではキャンディの生年を1898年と記載してありますが、第一次世界大戦を基準に作中描写から判断すると以下のように1899年生まれとするのが妥当です。
作中年月日 できごと
1899年5月7日 アニーと共に「ポニーの家」に拾われる
1905年5月7日 アニーと共に6歳の誕生日を祝う
1905年秋 ポニーの丘で王子様と出会う
1912年春 12歳でラガン家に奉公
1912年5月 13歳の誕生日にスイート・キャンディを贈られる
1912年秋 メキシコ送り~養女お披露目の狐狩り
1912年冬 帰郷とロンドン留学
1913年1月1日 新年を船上で迎える
1913年1月 聖ポール学園入学
1913年5月 14歳、メイフェスエィバル
1913年夏 スコットランドでサマースクール
1913年晩秋 馬小屋事件で自主退学~密航でアメリカ帰郷
1914年春 メリー・ジェーン看護学校入学
1914年5月 15歳、帰国したコーンウェル兄弟と再会
1914年7月28日 第一次世界大戦勃発
1914年8月 シカゴの聖ヨアンナ病院に派遣
1914年秋 看護婦試験合格
1914年冬 ステア志願兵としてフランス行き
1915年5月 16歳、ステアから誕生日プレゼントが届く
1915年初夏 聖ヨアンナ病院解雇、ハッピー診療所に就職
1915年秋 ステア戦死
1916年早春 ロックスタウン行き
1916年春 ポニーの丘で王子様と再会
※ キャンディがラガン家奉公時代に13歳の誕生日を迎えているために、まんが新聞記載の年表「キャンディのりれき書」では、この期間に年を跨いだという勘違いに基づく記述があり、このせいで編集者がキャンディの生年を間違えたと推測されます。
01

コーンウェル兄弟とアンソニーの生まれ年

1975年8月号(メキシコ行きの頃)の登場人物紹介では
  • キャンディ 13歳
  • ステア 17歳 (+4歳)
  • アーチー 16歳 (+3歳)
  • アンソニー 16歳 (+3歳)
連載時、メキシコ送りの展開(1912年秋バラの咲く頃)の号につけられた人物紹介では上記の通りですが、
作中1914年5月、キャンディ15歳の年にアメリカに帰国した際、ステアが4歳年長とすると、19歳になってもまだ聖ポール学院在学中になってしまいます。この時点で18歳というのが設定上ギリギリ、つまりステアは1895年~97年生まれということになります。
※ 英国の学校は9月新学期制だが、70年代くらいまでの年少向け漫画では読者の混乱を避けるために日本と同じ4月始まりに設定してある場合も多い。本作ではアードレー一族周辺人物はアンソニーの死後、晩秋から冬にかけて中途編入しており、進級試験の描写もないので、何月始まりの設定になっているのかはわからない。
1977年6月号​付録「まんが新聞」記載の生年月日では
  • キャンディ1898年5月7日生まれ
  • ステア1897年10月11日生まれ
  • アーチー1898年5月25日生まれ
  • アンソニー1898年9月30日生まれ
※ 実際に印刷された付録ではステアとアーチーの誕生日が入れ替わっている(原作者・水木杏子が公式サイトで編集段階でのミスと表明)。
画像
連載長期化に伴い1975年のレイクウッド編執筆中に作成された初期設定を微修正したのが2年後に作成された「まんが新聞」記載のデータと思われますが、このデータだとアーチーとアンソニーがキャンディと同い歳どころか数日~数ヶ月といえ歳下になってしまうので、やはりキャンディは前述の通り1899年生まれと解釈するべきでしょう。
作中描写や人物紹介から以下については確定と見てよいでしょう。
  • ステアとアーチーは一歳違いの兄弟
  • アーチーとアンソニーは同い年
ここで問題になるのはステアとアーチーの生まれ年。
一歳違いということで、まんが新聞にはステア1897年、アーチー1898年生まれと書いてありますが、誕生日から計算するとアーチーはステア誕生から227日後に生まれたことになります。これは流石に早産すぎる。
それどころか、まんが新聞のデータに従うと、1912年9月30日時点のステア、アーチー、アンソニー、キャンディの年齢は全員14歳になってしまいます(恐らく原作者から誕生日のデータとキャラクターの年齢差だけを聞いた編集者が雑に作成したと思われます)。

生まれ年と年齢差、13歳のキャンディとレイクウッドで過ごした時期(1912年4月~9月)の年齢を考え合わせると、
アンソニーは1897年9月生まれで1912年春にキャンディと出会った時点で14歳、同年生まれのアーチーも14歳だが作中5月末に15歳の誕生日をむかえ、ステアは弟より約一年半早い1895年10月生まれでレイクウッド編の範囲では16歳……というのが妥当な解釈になります(作中で誕生日を祝う描写がないので、アンソニーは15歳になる直前の9月中旬に死亡したのでしょう)。
ステアが自動車を運転できる年齢であること、アーチーの方がアンソニーよりやや年長に描写されていること等の作中描写とも整合性がとれますし。

まとめると以下のようになります
  • キャンディ 1899年5月7日生まれ
  • ステア 1895年10月11日生まれ
  • アーチー 1897年5月25日生まれ
  • アンソニー 1897年9月30日生まれ
この生まれ年で計算すると、ステアは聖ポール学園最終学年でロンドンの大学進学が半ば決まっていた時期に政情が不穏になりアメリカ帰国、アメリカでの進学先を検討中に大戦勃発、19歳の誕生日を迎えて「大人の男としての責任」を強く意識し、志願兵に……という流れが見えてきます。
ステアの戦死は1915年の秋ですが、10月に20歳の誕生日を迎える直前に亡くなったと解釈する方が「純粋な少年が大人の世界の壁にぶつかって、その純粋さゆえに砕け散った」という意味合いのドラマとして相応しく感じます。
02

テリィとスザナの生まれ年

まんが新聞ではテリュース・G・グランチェスターの生年月日を 1897年1月28日と記載していますが、
  • アンソニーより一歳年長
  • ステアと同年
という意図に沿うと、 1896年1月28日生まれで、キャンディと聖ポール学院で過ごした時期は17歳、『ロミオとジュリエット』の主演に抜擢されたのは19歳を目前にした18歳と考えると辻褄が合います。

原作者・水木杏子が公認サイト掲示板で2005年にファンからの質問に答えた発言によると、「スザナの年齢ですが、キャンディよりは年上、テリィよりは年下、と思っていてくださいね。」ということなので、スザナ・マーロウの生年は1897~98年と推定できますが、いくら有望新人でも16歳でシェイクスピア劇の主演は難しいので、97年生まれで片足切断事故は17歳の冬というのが妥当でしょう。
03

アルバートとローズマリーの年齢

キャンディは6歳の秋にポニーの丘でアンソニーと瓜二つの「王子さま」に出会っています。
また、アンソニー自身も幼い頃、母の側に自分と良く似た少年を見かけています。
  • キャンディと出会った時の王子様は14歳~16歳
  • ローズマリーの死はアンソニーが小学校に上がる前後程度の年齢
  • 『小説キャンディ・キャンディ FINAL STORY』によると先代ウィリアム・C・アードレーの急逝はウィリアム・Aが8歳の時
  • ローズマリーは結婚を反対されて駆け落ちし、出産後に体調を崩して生家に出戻った
  • キャンディと王子様が出会った時点で既にローズマリーは亡くなっている

これらの情報から整合性のあるタイムラインを割り出すと

1889年、スコットランド移民の事業家ウィリアム・C・アードレーに長男ウィリアム・アルバート生まれる。ほどなくして妻プリシラ死亡。

ウィリアム・Aが6歳前後の頃に姉ローズマリーが船員のブラウン氏と大恋愛の末、親族の反対を押し切って駆け落ち婚。

1897年、ローズマリーは9月に男児アンソニーを出産するが体調を崩す。
同年、ウィリアム・Cが急逝し、8歳のウィリアム・Aが相続人となる。事業への影響を考慮してウィリアム・Cの葬儀は内々で済まされる。葬儀に参列するために乳飲み子と共に実家に戻ったローズマリーは静養と我が子の養育、幼い弟の後見などを理由に伯母たちに引き留められる。
​

1902年、幼いアンソニーを残してバラの散る季節にローズマリー死去。
両親と姉を亡くしたウィリアム・Aはロンドンの全寮制学校に入学。

1905年秋、アードレー一族の会合に参加する為にレイクウッドに戻ったウィリアム・Aは、正式に親族の前でお披露目されるのを期待してキルトで正装したが、伯母のエルロイから強く咎められて勝手に自動車に乗り別荘を飛び出す。丘の上でソバカスの少女と出会う。

1911年、ウィリアム・Aはロンドンの大学を卒業し、正式に事業を継ぐ前に見聞を広める遊学という名目で世界中を旅してまわる。

1912年5月、たまたま里帰りしていた際に川でおぼれているソバカスの少女を助ける。
……という具合に、1889年生まれで16歳の時にキャンディと出会ったと仮定すると諸々のおさまりが良くなります(『なかよし』の登場人物紹介ページでアンソニーの年齢が16歳と書かれていたということは、初期設定のアンソニーも、瓜二つの王子様も16歳を想定していたと考えるのが妥当)。

イギリスの大学は三年制で、名門子弟が卒業後に諸国遊学(グランド・ツアー)をするのはよくあるパターンです。
04

グランチェスター公爵とエレノア・ベーカー

  • 正妻である公爵夫人が「あととりなんて みとめませんからね!」と発言している処から判断すると、グランチェスター公爵とエレノアの間には婚姻関係が存在したと思われる(嫡子でなければ爵位の相続権はないので)。
  • イギリスでは結婚の数週間前に婚約を公表し、異議申し立てがないのを確認して初めて結婚許可証が発行され、さらに結婚式には立会人も必要。しかしテリィの母親の素性は世間的には秘密になっている。

以上から推測すると、
1895年頃、進取の気性に富む若き日のグランチェスター氏は、大学卒業後のアメリカ遊学で飛行機開発の夢に触れたり、才智にあふれた新進女優エレノアと出会って恋に落ちたりした。

偏狭な英国貴族社会への反発もあり、エレノアと米国式の手続きで結婚。息子のテリュースも生まれて四年ほどの間は幸せな日々を過ごすが、父親が死んで爵位を継ぐことになり、親族一同から「あんな女との結婚は無効だ」「帰国して名門貴族の女性と結婚しろ」と責め立てられて日和る。(公爵家に何か問題があり、現夫人とどうしても結婚しなければならない理由があったのかもしれない)
​

エレノアとは離婚し、テリィも米国に残して帰国。その後、現正妻との間に長男が生まれた頃、親族間で「あのアメリカ女が息子の相続権を盾にゴネるかもしれない」と問題になり、テリィだけ引き取る。

正式に跡継ぎとして立てられてはいないが、庶子として明確に扱いが区別されているわけでもなく、世間的には「公爵家の何番目かの息子」と曖昧なあつかいのままテリィは思春期になりグレる。
……という感じでしょうか。愛する男の社会的立場のために身を引いた経験のあるエレノアがキャンディに肩入れするのも納得できます。

尚、ライト兄弟が世界初の有人飛行に成功したのは1903年で、その頃グランチェスター公爵は30歳にはなっているはずなので、「親父の若い頃の趣味」として倉庫で誇りをかぶった複葉機が登場するのは明らかな時代考証ミス。

しかし物語上の意味付けとしては
  • 若き日のグランチェスター公は新しもの好きで、新興国アメリカで充実した青春を過ごし、身分のないアメリカの新進女優と打算抜きで恋愛して家の反対を押し切ってまで結婚した。
  • そんな公爵でも家や社会の圧力には勝てず、愛する女と別れる決断をした。
  • よって息子であるテリィの反発や苦悩も理解できるが、立場上ストレートに態度に出すことはできない。
……というキャラクターの背景をうかがわせるギミックとしての意味はあります。

父のような愛し方はしない、と心に決めていながら結局は「男の社会的責任」からスザナを選び、真に愛するキャンディと別れるという皮肉な結果に終わったテリィですが、一方で公爵家と縁を切り俳優として芸一本で身を立てる道を貫いた点では、父の轍を踏まずに新しい生き方をすることができた訳です。
以上、あくまで公開されているデータから辻褄合わせをするとこういうタイムラインになりますよ、という推測であり、公式設定がこうだと主張している訳ではありませんので、その点はご留意ください。
参考:『キャンディ・キャンディ』の設定やキャラクターに関する原作者発言を含む記事
  • 『キャンディ・キャンディ』の最終回と「二つのバッヂ」事件
  • 『キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から』について
  • 『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』に関する著者一問一答
  • ステアの戦死とアンソニーの「バラの死」
  • 復刊ドットコム版『小説キャンディ・キャンディ』刊行の経緯​

『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』に関する著者一問一答

12/1/2010

 
2010年11月『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』刊行後、 "公認ファンサイト妖精村"の掲示板に著者の名木田恵子が投稿した、ファンの質問に対する回答(投稿日:2010年12月 1日(水)23時47分37秒)。​クリックで回答が表示されます。
1.今や小説の出版を終えられたわけですが、キャンディが登場するか、または登場することがないとしても続編を書く御計画がありますでしょうか?
FINAL・・。これで登場人物たちともお別れ、という意識で書きました。
続編を書くことはありません。
けれど、FINALは新たな始まりでもあると思っています。
今回書き上げたことにより、さらに身近になった物語世界の<永遠の土地 、空、風、花々、建物 >をもとにしたスピンオフを書けたらと(出来るまでは予定にすぎませんが)思っています。
ある詩人がいわれたように<風景は時間>です。
新しい時代、新しい主人公を同じ舞台で・・もともとそちらを書く予定でした。
2.キャンディを再び画面上に登場させるために別の漫画家やアニメ制作会社とご協力されるお考えはありますでしょうか?
わたし自身にはそういった意思はありません。
けれど、考えもしていなかったFINALを書いたように今後出会う人たち、その人たちが信用できるか否か、企画によってはどうなるかはわかりません。
先のことはわからない・・それが人生の楽しみね!
3.最初に書いた時から、先生のキャンディの物語に関する感情が変わったということはありますか?
物語世界としては、全くありません。
4.なぜ、改訂版では曖昧な結末を描くことをお決めになられたのでしょうか?今後私たちがいつの日か「あのひと」が誰であるか知ることはあるのでしょうか?
曖昧にした理由はいくつもありますが、その一つは、あのひとに至るまでのdetailを書かなかったからです。それを書けば続編になってしまいます。
わたしは裁判上では原著作者で続編も自由に書くことはできますが、なんといっても原点は漫画です。
漫画のために描いた物語なのです。
(はじめから小説として書いていたなら、書いていたでしょう。)
そして、漫画として評価されなければ、現在もありません。
そういった意味で<曖昧>な結論が精一杯の<その後>です。
​
あのひとがだれか、ということより、キャンディスが<さまざまな苦難を乗り越え(そうなのよ!)、いちばん<愛しているひと>と穏やかでしあわせに暮らしている>ことを最後にお話ししておきたかったのです。
5.改訂版に関わる先生のお仕事について個人的なインタビューを受けていただけることを考慮願えませんでしょうか?
すべてにお答えはできないと思いますが、可能です。
01

『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』は「続編」ではありません。

キャンディのFinal版のこと 投稿者:名木田恵子 投稿日:2010年10月14日(木)
(略)
繰り返しいっていますが<続編ではありません>。
今までの小説版を全部書き直したのです。でも、なんだか計算上は300枚余は原稿増補になるし、30代のキャンディが回想しているし・・担当さんは“書き下ろし”といってくださるけど・・でもね、内容は同じです。
だから、あんまり期待しないでね。

ほんとうに時間がかかりました。
まだ半分、心が空を飛んでいます。
でもね、これでほんとにすべて、けじめとお別れができました。わたしにとって、ほんとのFAINALです。

(略)
とうとう、やっと、ここまでたどり着きました。
この本が出たら、わたしも深呼吸したいと思います。
何と長い道のりだったことでしょう・・事件当初からずっと見守ってくださったこと、みんなのこと、思い出しています。ありがとう。

発売日まで、どきどきです・・。
みんなが喜んでくれますように・・。
名木田恵子(水木杏子)『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』祥伝社
名木田恵子/水木杏子公認ファンサイト妖精村が活動終了した為に著者発言が参照し辛くなっていますが、企画公表段階から出版後に至るまで、著者・名木田恵子/水木杏子は「これは『キャンディ・キャンディ』の続編ではない」と繰り返し発言しています。

一応、2010年 7月29日(木)、2010年10月14日(木)、2010年10月16日(土)の著者発言は妖精村ブログ「妖精村からのお知らせ」の2010年10月27日記事「キャンディ・キャンディ Final Storyへのキセキ」に残されていますが。

…まあ、自作に関する重要情報について、自分のサイトでも出版社サイトでもなくファンサイトの掲示板やチャットでの告知だけで済ませるというのも如何なものかと思いますけどね。
刊行当時の事情を記すと、そもそも祥伝社は復刊ドットコムから出た『小説キャンディ・キャンディ』の文庫化を口実に名木田氏に近づいて来た。
参照:
 復刊ドットコム版『小説キャンディ・キャンディ』 刊行の経緯

それがいつの間にか企画が変わり、リライト版ハードカバー上下巻となった(「安価にお手元に」どころか復刊版より高い!)。
ところが出版直前に祥伝社公式サイトで公開された宣伝用フラッシュムービーや、書店サイトや紙媒体の広告に記載された文言では、オマケ要素に過ぎない後日談部分を全面的にアピール。現物を手にしてみたら、本のオビにも続編誤認を誘うコピー。

これじゃ読者が「キャンディの続編」と誤解しても不思議じゃない。

出版社側が最大限にウリと見積もった要素を推すのは当然といえば当然ではあるが、アンフェアだよな。
ファイナル執筆にとりかかる前、祥伝社側は名木田氏の「小説としてキャンディの作品世界を静かに閉じたい」「再漫画化は旧作ファンの心情を配慮して絶対に拒否」という主張を受け入れ、裁判関連の事情にも理解を示し、名木田氏は「この人たちは私の理解者!」と感激して出版契約を結んだらしい。
…が、いざ本が出てみると、態度を豹変させた祥伝社はファイナルをベースにした漫画化やアニメ化、海外での映像化等の企画を嬉々として持ち込みゴリ押しを始めた。
名木田氏は「執筆前にあれほど念押ししたのに…こちらの事情や心情に理解を示してくれたのに…」と困惑やら怒りやらを表明していましたが、いや、多少なりとも世の中を知ってる人間なら事前に想定できていた事態と思いますけどね。

最初に文庫化の話を持ち込んだ段階から、祥伝社は「ビッグタイトルである『キャンディ・キャンディ』の二次利用によるコンテンツビジネス」で一儲けするのを狙っていたって事でしょ。言うたらなんですが、小説キャンディの文庫版自体でそれほどの売り上げが見込めるとは思えないもの。だから復刊ではなく大幅リライトでタイトルも変えさせた。世間知らずな作家の浮世離れした主張なんて、適当に調子を合わせておけばいい。出版して権利に食い込んでしまえばこっちのもの、後はいくらでも丸め込める……という魂胆だったんじゃないですかね。

ファイナルストーリーが品切れのまま増刷されない実際の理由は知らないけど、その辺りの不協和音が影響してるんじゃないかと個人的には想像します。


そんな訳で、「ファイナルストーリーはキャンディの続編」とガセを流すのはやめようね。あと、現物を読んでもいないのに「続編でキャンディは○○と結ばれた」と又聞きで吹聴して回るのもやめましょう。実際に読んだ上で「私はこう解釈した」ならいいけど。

私もオタだからキャラ萌えカプ萌えは否定しませんが、物語自体のテーマ性を無視して自分の萌え解釈を他キャラのファンや公式に押しつけて騒ぐカプ厨行為はつつしもうな、リア中じゃないんだからさ。

『キャンディ・キャンディ』というのはキャンディス・ホワイトという倒れては立ち上がるタフな少女のビルドゥングスロマンなので、ぶっちゃけ、物語中に登場する少年たちはキャンディの人生旅の一里塚、成長の肥やしみたいなものなんだよね。「なんで殺した」「なんで別れさせた」と責められても物語作家としては困るだろうに。
02

なぜファイナルストーリーは「挿絵ぬきの小説」なのか

SNSで「本当なら、ファイナルストーリーだって いがらし先生の挿絵があったはずなのに と思ってしまうんです」などと心無い発言をしている人がいたので、裁判当時の水木氏の発言を再録しておきます。
暑いけれど、寒い夏 ◆ 水木杏子 1999-08-09 (Mon) 13:16:30 
(略)
キャンディの続編について・・
この前、あえて 一番大切なこと、ふたつ、書きませんでした。

ひとつは、これほどまでに問題化したこの作品を気持ちよく出版してくださるところがあるかどうか・・
出版界ではもはや<キャンディに係わるとたいへん>という意識が生まれています。
きちんとした解決が世間(出版界)で納得されない限り、敬遠されることでしょう。

もうひとつは、根本的なことです。
原作者の水木は<書く気>はあるが<その気力>が残るでしょうか・・
わたしは3年ものあいだ<原作者ではない><絵はわたしだけのもの>といわれつづけ、<唖然としたまま硬直>しつつあります。
そう・・絵は漫画家が描きました。それについてはなにがあろうと、感謝し、認めています。
しかし、ここまで漫画家が<原作者>を認めたくないなら、わたしは<絵>から心が離れていくでしょう。
もともと、キャンディの物語は漫画家の絵からイメージしたものではないからです。
一回目は、とくにわたし自身の世界のイメージといえます。

(漫画家のファンからは、また軽率な発言と責められるかもしれません。
わたしはたしかに、未熟でストレートな人間です。とくにキャンディの読者の前では正直でありたいと望み、みんなの<キャンディがすき>というきれいな気持ちを受け入れてきました。
しかし、理解してもらえないとしたら、それはそれでしかたありません)

もちろん、その後の連載は、漫画家の<絵>が基本でしたが、こうも長いあいだ「わたしだけの絵よ!」と耳元で叫ばれると、<絵のキャンディ>と<わたしの心のキャンディ>と分離してしまいそうです。
そこまで、硬直したら、続編どころか、わたしにとってこの作品は絵をみるだけで、心から血がにじんでくる・・できたら思い出したくない作品となるでしょう。
著作権侵害とは目にはみえないけれど、心臓に消えない青あざをつくる犯罪と今認識しています。
(略)

​水木杏子公式サイト掲示板より
(「続編」ではないにせよ)原作者がいがらし絵と決別したからこそ『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』を書き得たのだ、という事実を踏まえれば、「いがらし絵の挿絵を入れてほしい」というのが如何に心無い言葉なのか理解できると思います。
オマケその1

アンソニーの死とテリィの登場について

伊藤彩子・著『まんが原作者インタビューズ―ヒットストーリーはこう創られる!』同文書院 (1999/10)より、水木杏子の証言。
水木:アンソニーの死やアルバートさんが丘の上の王子さまだったという謎解きは初めから決まっていたの。大河ロマンの連載といっても、人気が出るかどうかは分からないから、完璧なプロットっていうのは立てられなかったのね。途中で打ち切られるかもしれないし……。それで、プロットとして、大きな柱を何本か立てて、その間は自由に発想する、という感じで書いていくつもりでいました。でも、第一回からすごく人気があって、編集長がいつまでも続けてもいいよ、って。「アンソニーが亡くなった後はどうするの?」ってまんが家も担当も心配していたけど(笑)。

――……ということは、テリィは、最初から考えていたキャラじゃなかったんですか?

水木:そうなのよ。最初のプロットではテリィの登場予定はなかったの。いがらしさんの描くアンソニー、やさしそうで、とってもステキだったでしょ。だからこそ、アンソニーとは違った強い個性、やさしさの表現も違う、正反対だけどどこか似ている……そんな強烈な個性の少年を出したかった。(略)テリィの登場で、アーチーの魅力が書けなくなったのが、アーチーに申し訳なくて。私の中ではアーチーは、もっと違った感じに書きたかったのだけど……。


    ​『まんが原作者インタビューズ―ヒットストーリーはこう創られる!』P158-159より 
オマケその2

ポエム「思い出の箱」

『なかよし』1978年3月号付録「キャンディの思い出ノート」には水木杏子作のポエム「思い出の箱」が添えられているのだが、
こうやって すぎていく日々を
マリンブルーのガラスの箱に
いれて
とっておければいいのに
そうしたら すきなときに
思い出を あけて
みることができるでしょう
そうよ
ほんとに そんな箱があったら
あたし たいせつにするわ
夜明けの
風がまどろんでいる時間に
とりだして みがくの
思い出を
毎日 きっと……

「思い出の箱」水木杏子(講談社 月刊『なかよし』1980年3月号付録「キャンディの思い出ノート」より)
ファイナルストーリーの後日談部分はこのポエムを踏まえたものではないだろうか?キャンディスは少女時代に夢想した「思い出を入れる箱から思い出をとりだしてみがく」を大人の女性になってから実行しているのである。
参考:『キャンディ・キャンディ』の設定やキャラクターに関する原作者発言を含む記事
  • 『キャンディ・キャンディ』の最終回と「二つのバッヂ」事件
  • 『キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から』について​
  • ステアの戦死とアンソニーの「バラの死」
  • 復刊ドットコム版『小説キャンディ・キャンディ』刊行の経緯
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『キャンディ・キャンディ』のファンフィクションに関する原著作者・水木杏子の見解

11/4/2003

 
01
2003年11月に名木田恵子(水木杏子)公認ファンサイト「妖精村」掲示板上で、とある「キャンディ・キャンディ」ファンフィクサイトをめぐって議論があった。
ファンフィクションとリンクについて 投稿者:名木田恵子 投稿日:11月 4日(火)02時34分54秒

(略)
ファンフィクションの出版については、著作権問題をからめてイソノ武威さんが明快にお答えくださいました。(イソノさん、いつもありがとう!)その通り、それは不可能なことだとファンフィクションの作者もよく分かっていらっしゃると思っています。

ファンフィクションについてのわたしの考えは一貫しています。

<ファンフィクションもファンの”お楽しみ”のひとつ。作品から想像の翼を広げ、楽しむことは自由です。ひとりひとり思い描く世界もちがうでしょう。けれど、そのどの”内容”についても原作者は関知していませんし、公認することもありません。原作とは全く別な世界であると判断しています。>
【BBBBB】さんは、だれがごひいきなのかしらね!

・・・・・・・・・・・・・・

このところ【BBBBB】さんだけでなく他にも同じようなご心配を頂いていました。
そういった心配を生む原因のひとつに水木HPとのリンクがあるような気がしました。
しかし、ファンフィクションについては、リンク先の管理人が節度を守ってくれさえいれば問題はないと思っています。
けれど、見過ごせなかったのは再度イソノさんが書いてくださった問題でした。

わたしはファンは本来、裁判など気にせずに楽しんでほしい、と思っています。
しかし、水木HPとリンクしてしまったら(おそろしい!)もう事件を無視はできません。
水木HPは泣く子も黙る(!)シリアスなHPなのですから・・・
そのリンク先で<不正グッズ、美術館>などの書き込み、また、侵害行為があった時、サイトの管理人の姿勢が重要です。その対応によっては、水木の姿勢も問われることにもなってしまいます。水木HPで<不正に抗議>しているのに、リンク先では公然と不正について語られていたら・・・大変困るのです。
そういったことを思うと、リンクは作品を楽しみたいファンたちにとってはかえって<不自由>ではないかと思いました。ファンは無理に事件について理解する必要もないのです。自由に作品世界を楽しんでほしい。でも・・・リンクしていると発言も遠慮がちになってしまうのではないでしょうか。

サイトの管理人さんに、お互いリンクをはずしましょう、とメールで話しました。この事件は、判決はでましたが、美術館や海外などについてもまだまだ終わっていません。
深い闇を抱えたわたしのHPとのリンクは、今後、よけいなことに引きずりこんでしまうかもしれない・・・そう判断しました。
リンクすることの意味も深く考えず、浅はかだったと自らを反省しています。

作品について自由に楽しめるHPはそうそうあるものではありません。
節度を守って、仲良くこれからも楽しんでほしいと願っています。

(略)

詳細を読む

復刊ドットコム版『小説キャンディ・キャンディ』刊行の経緯

9/30/2003

 
画像
小説版『キャンディ・キャンディ』はfukkan.com会員291名の投票によって、ブッキング BOOK-ing ,Inc.より2003年9月にハードカバー版(ISBN: 4835440633)が刊行された。

参照外部リンク:復刊com 『小説 キャンディキャンディ』(リクエスト受付開始 2001/01/11)

ハードカバー版1,500部が完売の後はソフトカバー版(ISBN: 4835471911)がオンデマンド出版されている。
01

京都精華大学表現研究機構マンガ文化研究所による中傷フォーラム

2004年4月、京都精華大学表現研究機構マンガ文化研究所は、『キャンディ・キャンディ』の原著作者である名木田恵子(水木杏子)には出席のオファーをせず、漫画版作画者・いがらしゆみこ のみを招いて「マンガは誰のものか!?」と題した「フォーラム」を主催した。

その欠席裁判もどきの「フォーラム」の席上で、漫画版作画者・いがらしゆみこ は、ブッキングより復刊された小説『キャンディ・キャンディ』に関して、 
「原作者が、法律を、そういうふうに自分に有利に働いたことを最大限に利用して、勝手に本を出して、それは正義であると主張しているのも、すごく納得のいかないことなのです」 
と非難。日本マンガ学会理事・長谷邦夫、牧野圭一らパネリストも、いがらしゆみこの主張に対して大変同情的だったとの報道がされている。

参照:安藤健二著『封印作品の謎2』(太田出版)p48
および『週刊SPA』扶桑社(2004年6/8号)竹熊健太郎によるレポート P104-105

明らかな言いがかり発言ではあるが、一応事実関係を記しておく。  
02
画像
もともと小説版『キャンディ・キャンディ』は、講談社から
1978年に「水木杏子」名義で少年少女講談社文庫『小説キャンディ・キャンディ』ハードカバー全三巻が出版され、
1990年に「名木田恵子」名義で新書版『キャンディ・キャンディ : 永遠のラブストーリー』全三巻として復刊された。
(カバー画、挿画にはいがらしゆみこによるマンガ版のイラストを流用、描きおろしは一枚も無し)

手元に新書版一巻があるのだが、奥付の著者名は「名木田恵子」のみ。
マルC表記も「© KEIKO NAGITA 1990」のみ で、漫画家の名前はどこにもない。

最高裁判決を待つまでもなく、刊行当時から小説版は名木田恵子の単独の著作物として認められていたのである。

「二次著作権は、一次著作権に遡及して影響することはない」ので、イラスト抜き、文字のみの『小説キャンディ』には、漫画版作画者・いがらしゆみこの権利は及ばない。
ブッキングの小説版復刊に関しては、法的・道義的問題は何一つ存在しない。 
03

『小説キャンディ・キャンディ』復刊交渉開始から初版完売まで

2001/01/11に復刊コムでリクエストが受付開始、2002/04/27に投票者数が100名を超え復刊交渉が開始された。
復刊ドットコムからのメール ◆ 水木杏子 2002-05-06 (Mon) 15:20:30

(略)復刊ドットコムからご丁寧なメールをいただきました。もっとゆっくり、だと思っていたので驚きました。
メールによると復刊コムの<素早い反応>もみなさまからの<お声>のようです。
みえないみんなの声に胸を熱くしています。(子ども用に書いた小説版なのでそれほどの価値があるのかしら、と不安ですが・・・)
でも、ひとりひとりのお気持ちを大切にして復刊コムの方と話し合っていくつもりです。まずは講談社のご意向ですね。

小説版でのエピソードを、やはり記しておきます。

<小説版>にはいがらしさんのご助力がありました。
小説キャンディを3巻で完結して書くように、といわれ、当時わたしはたいへん戸惑いました。漫画連載はまだ完結はしていなかったし、あの長い話をどうまとめよう・・・。
なにより、わたしは<原作原稿>が手元にそろっていなかったのです。(だらしなくもいい加減!)

小説キャンディは<ノベライズ(漫画を小説にしたもの)>ではありません。(一度そういった書き込みがあって気になっていました)
原作原稿から、新しく書き起こしたものです。
その<原作原稿>をすべてきちんと取っておいてくれたのが、いがらしさんでした。
小説を書き下ろすのに<原稿>がそろわず困った、といったわたしに「ぜんぶ生原稿とってあるわよ」といがらしさんが言ってくれたのです。

もどってきた生原稿はとてもきれいに保存してありました。
大切にしてくれていたことを感じました。

そういった想い出の数々を忘れることはできません。

この事件の間中、どうしてもわたしの気持ちの整理がつかずたいへん曖昧な対応になってしまったのは、そんな個人的な想い出のためでした。
なんでこんな事件になってしまったのか理解できず混乱しっぱなしだったのです。

6年目に入る今はもう、思いもまとまり、心の<けじめ>もつきました。

<小説版>を望む人の多くは本来、<漫画本>として残ることを望んでいるのでしょうね。そう思うと切ないですが・・・
(略)

水木杏子旧公式サイト掲示板より
04
まず元々の出版社である講談社からの復刊について打診したが、いがらしゆみことのトラブルを懸念した講談社は却下。復刊ドットコム(当時は「株式会社ブッキング」)から新たに合本版が刊行されることになった。
<小説版キャンディ>については、もう出版する意志もなく、このまま埋もれてしまってもよい、と覚悟を決めていました。

<復刊コム>の投票のことは、わたしにとって感動的なことでした。
しかし、ほんとうは、みなさまは<漫画の本>を出版してほしいのでしょうね・・・・・・
それを思うと切ないですが・・・わたしの気持ちは揺るぎがないのでほんとうに、申し訳なく思います。

せめて、<復刊コム>から小説版が出版されるように、現在、前向きに話し合っています。

一番の問題は、いがらし氏とのトラブルです。

<講談社>では、そういったことを予想し、出版を断られました。

<復刊コム>はまったくの部外者なので、トラブルをおそれつつ、前向きの姿勢ですが、その最大の問題によってはどうなるかは、まだわかりません。

<小説版キャンディ>については水木は印税をいただかないつもりでおります。
その印税を、恵まれない子供たちに少しでも役立てられれば、という気持ちです。

そういった、わたしの意志をどうか、いがらし氏も理解して下さり不要なトラブルをおこさず、みなさまのお気持ちを形にしていただけたら、と願っています。

また、ご報告いたします。
​
水木杏子旧公式サイト内<復刊コムの小説版情報>より
復刊ドットコムからの告知
株式会社ブッキング 左田野 渉

ずいぶん長い間、あたためてきた企画です。小説版「キャンディ・キャンディ」の刊行については、昨春に著者の名木田先生と、初めて、お会いして以来、じっくりと話しあってきました。ファッションについては保守的な私にとって、スミレ色のワンピースで現れた先生のいでたちは、まさにショッキング・バイオレットでした。このたびの復刊書籍の装丁にも、名木田先生の色彩感覚が色濃く投影されています。

「キャンディ・キャンディ」は、ご承知のように、漫画の世界では、いろいろな事件が起こった作品です。われわれも復刊に悩みました。しかし、顧問弁護士と充分な相談の上「二次著作権は、一次著作権に遡及して影響することはない」との見解を得ました。その上で、私が決意したのは、当社の営業担当者の一言でした。「うちがやらなければ、この本はどこでもできないですね」。名木田先生も、正直言って、相当に迷われたようです。しかし、女の子のバイブルである、この素晴らしい物語を絶やすことはできないと思いました。

今回は全3巻であった講談社版を、一冊にまとめました。第一部と、第二部は、皆さまおなじみのキャンディやアンソニーたちの物語。そして第三部は、キャンディからの書簡という形をとった語り口になっています。今回の出版に当たっては、巻頭に名木田恵子先生の直筆になる「みなさまに風を・・・・・」と題した前書きを掲載いたしました。柔らかい文字のタッチが、物語の主人公の少女の心の優しさを、そのまま伝えてくるように感じました。

復刊ドットコムから皆さまへ (2003.08.31)
05
2003年に水木杏子(名木田恵子)旧公式サイト上で公開された、『小説 キャンディ・キャンディ』復刊報告。
小説版の復刊について 

<小説キャンディ・キャンディ>が、みなさまのおかげで復刊されました。
“復刊ドットコム“への投票、そして、あたたかい励ましを受け、原作者冥利につきることと深く感謝しています。
けれど、決心しながらも何度も立ち止まり、<火中の栗を拾う覚悟>とまでいってくださった“ブッキング”の方たちを戸惑わせたりしました。<小説版>が実現したのもブッキングのみなさまの心ある対応のおかげです。
 
わたしが悩んだのは、なんといってもトラブルを避けたかったこと。そして、漫画の原作として書いた物語なのに・・・という未だに消え去らぬ切なさがあったのです。
 
漫画の原作を書くときの意気込みは、小説を書くときとまた、心構えが違いました。
なにより、よい漫画に描かれてほしい、と願いを込めます。原作の“読者”は担当編集者と漫画家のみ。とくに漫画家の気持ちが“物語”に取り込まれ、その世界に没入してほしいと(それが漫画としても成功する)そう思って書いてきたのです。
25年も前、小説版の話があったときも(漫画があるのにあえて小説など・・)と思っていました。2000枚余の原作を600枚ほどに縮めることに抵抗もありました。
ズボラなわたしは原作原稿もそろっていなくて、一から書かなくてはと困惑していたところ、漫画家がきちんと原作原稿を保管してくれていたことにとても感激したことを覚えています。
一巻、二巻は漫画に寄り添って書きましたが、三巻目はとても200枚では 収まらず<手紙>形式にしました。
漫画では描かれなかったところ、また、気になっていたことなどを補うのに<手紙>がいちばんいいと思いました。(それでも、まだ不十分で自分自身に不満は残りましたが)

13年ほど前に新書版で復刊されたときは、もしかして小説版を読みたいと思ってくださる成長した読者もいるかもしれない、という気持ちでした。そのときも(また、今回の小説版も)赤面したまま、顔を上げられないような文章の未熟さも含めて<書いた当時の想いや空気>を大切にしたいと思い、ほとんど手を加えませんでした。“そのまま”が当時の精一杯の“わたし“なのです。

今回の“ブッキング”での復刊は、さし絵は入りません。
文字だけの物語をほんとうに読者が望んでいるのか・・・それも不安でした。
けれど、考えに考えた末、復刊を望んでくれた方たちの気持ちを、そのままありがたく受け止めることにしたのです。
また、<かつての小説版>がネット上で身分不相応な値段で取引されていることも気になっていました。

そして・・・・
さし絵なしのブッキング版の小説こそ<絵と訣別した>というわたしのはっきりとした意志表明になるとも思いました。

今、小説版を手にして、やはり切ない気持ちもあります。
けれど、しみじみと感じるのは<物語世界>はどんなことにも侵されず、汚されないのだということです。(読者のみなさまの心の内もそうあってほしい、と勝手に願いながら・・・)
作品がヒットし、多くの人に愛されたこと・・・それは、作者たちにとって何ものにもかえがたい喜びです。
けれど、作中人物たちの“魂”は、世俗のどんなことにも変化などしない。いつも“生まれたままの姿”でそれぞれの読者の心の中に棲み続けるのだと思います。

<小説版>は、応援してくださったみなさまの力で生まれました。
本を手に取るたびに、わたしはそのことを思い出すでしょう。

尚、<印税>の全額は交流があった海外養子縁組などに取り組んでいらっしゃる養護施設<慈愛園>に寄付するつもりでおります。
後日、そのご報告もいたします。

水木杏子旧公式サイト内「小説版の復刊について」より
06
復刊書籍1,500部の完売報告と印税の寄付先について。
その後のご報告

平成15年12月、
<小説キャンディ・キャンディ>の印税の全額、275、500円を
熊本市神水の<慈愛園乳児・子供ホーム>に寄付させていただきました。

今のところ予定はうかがっていませんが、小説版が増刷された場合にはその使い道についてもご報告していきたいと思っています。

追記
小説版を出版した理由は、上記の通りです。
いがらし氏より内容証明が届きましたが、事件の経緯を省みられれば充分であると考え、お返事はしておりません。
小説版の今後について

みなさまのおかげで復刊された<キャンディの小説版>(ブッキング)は初版1500冊をそろそろ売り切ってしまうようです。

今後のことについてブッキングの編集部と相談しました。
トラブルを避けるために、このまま終えることも考えましたが、まだ<小説版>の存在をご存知ない方が手に入りにくくなること、また、そのために古書として身分不相応な値がついても、と考え、今後は<オンデマンド出版>として小部数の出版、ということに決まりました。
ただ、小部数のため<ハードカバー版>ではなくなるようです。
内容、装丁などはもちろん変わりませんが、<ソフトカバー版>になっても同じ値段になってしまうということが、気になっています。
(これから<ソフトカバー版>を購入される方、そういった事情なのでごめんなさいね。)

印税などは、(小部数なので)年に一度をめどに金額がある程度まとまったら、これからはわたしが住んでいる町の<療護施設>に寄付していきたいと思っています。 

水木杏子旧公式サイト内「小説版の今後について」より
『小説キャンディ・キャンディ』の印税、ハードカバー版1,500部 275,500円全額は、既に熊本市神水の<慈愛園乳児・子供ホーム>に寄付された。
オンデマンド版の印税も全て療護施設に寄付されるとのこと。

    参照外部リンク:
    水木杏子(名木田恵子)旧公式サイト内「小説版の復刊について」

このように最高裁判決後も、復刊を特に希望する愛読者に向けた少部数刊行、印税は全額寄付という形での作品利用のみにとどめている水木杏子に対して、いがらしゆみこは「法律を、そういうふうに自分に有利に働いたことを最大限に利用して、勝手に本を出して」と非難し、いがらしと親しい漫画業界人が理事を務めていた日本マンガ学会もわざわざイベントを開催して原作者攻撃に加担、同学会理事の長谷邦夫は様々な場所で原作者は印税配分が不満で裁判を起こした、ゴネ得を狙っている等と吹聴し続けた。
復刊ドットコムからの告知
ブッキング 左田野 渉

お待たせいたしました。「小説版キャンディキャンディ」がオンデマンドで重版いたしました。

おかげさまで初版分は完売。多くの方々から、ご注文をお待たせしておりました。出来栄えを確認するために、名木田先生と、新宿で待ち合わせいたしました。ここでOKがでましたので、月末には発売予定です。前回はハードカバー版でしたが、今回の増刷はソフトカバーでの発売となりますので、あらかじめご承知下さい。
​
ちなみに本書の刊行に際して生じた印税は、名木田先生は、全て、親のいない恵まれない子供たちのための施設に寄付されていらっしゃいます。本書はコミックとの関係で、いろいろなことがあったことは、皆さま、ご承知のことでしょう。本書の復刊は、著者サイドから見れば、決して営利行為ではなく、長年、キャンディ・キャンディというキャラクターと物語を支持して下さった読者の皆さまへの恩返しなのです。従って、名木田先生は本書をオンデマンドの形で細々と残してゆく形として決意されたことを、ご自身のホームページでご報告されています。

復刊ドットコムから皆さまへ (2004.08.27)
07
名木田恵子(水木杏子)公認ファンサイト内掲示板でも復刊報告がなされていた。
キャンディの小説版について 投稿者:名木田恵子 投稿日: 9月27日(土)22時27分53秒

ご無沙汰していました。
長い夏休みの間にキャンディの小説版がブッキングから出版されていました。

決心しながら時間がかかったのは、トラブルを避けたかったこと、また、絵のない小説は漫画ファンを切なくさせてしまうのでは・・・と、心配だったからでもあります。
けれど、くり返し書いてきたように、復刊を支持してくださったみなさまのご好意をありがたく受け止めることにしたのです。

もうひとつ、不安だったのは漫画を読んでいない読者にはどう受け止められるのだろう・・・ということでした。 (あまりにも文章その他、稚拙なのでねぇ・・・)
けれど、幸いにも(?)ブッキングの担当者は<漫画を読んだことのない編集者たち>でした。 彼らが小説版だけで作品を理解してくださったことはたいへん心強かったです。
(小説版は多くの図書館が購入してくださったようで、それもありがたいことでした。)

ただ・・・ほんとうに、漫画ファンは複雑なことでしょう。
だれもが漫画から(あるいはアニメから)作品を知ったのですものね。
原作者が絵との訣別を宣言してしまうなんて・・・前代未聞・・それは本来なら長年忘れずにいてくださった読者にいってはならない言葉だということもよくわかっています。 しかし、正直に心境をお話しなくてはと思いました。熱心な読者たちにこそ偽りたくない、と・・・
長い事件の間に<目からうろこ>だったことは、たぶん、キャンディファンのなか唯一漫画を意識していなかったのが<原作者>だったということです。
つまり、漫画をイメージして物語を書いていたのではなかったといことを、皮肉にもこの事件で確認してしまったのです。 長い間、わたし自身原作者としての義務感にとらわれていたのだと今更ながら感じ入りました。

けれど、そういうことさえも漫画ファンを悲しませるようで心苦しいです。

漫画ファンには、ほんとうに<ごめんなさい>を・・・・
(略)

名木田恵子公認ファンサイト「妖精村」掲示板より
08

キャンディとアンソニーの幼い恋と「赤い実はじけた」

その後、(株)祥伝社が『小説キャンディ・キャンディ』の文庫化を口実に名木田氏に近づき、2010年にリライト版ハードカバー『小説 キャンディ・キャンディ FINAL STORY』上下巻が刊行された。

 参考: 『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』に関する著者一問一答 

ファイナルストーリー刊行当時に名木田恵子公認ファンサイト掲示板上で、『小説キャンディ・キャンディ』内に幼い初恋のメタファーとして「赤い実」という表現が使われていることを指摘され、名木田氏の代表作の一つ「赤い実はじけた」の原点が「キャンディ・キャンディ」であることを自身認めている。
新しい世界に向かって  投稿者:名木田恵子  投稿日:2011年 1月 3日(月)23時06分55秒
    (略)
さまざまなお気持ちが渦のように伝わってきました。
FINAL 版については、どんな感想でも仕方ないと思い、漫画ファンには覚悟の上だったのでここでのあたたかい感想はいっそうありがたかったのです。

今、物語を知らなかった人たちの新しい感想がとてもうれしい。
小説を読む楽しみを知った、という感想に胸が痛くなりました。

書くか書かないか・・・これを書いてなんになるの・・と、随分悩み、迷いました。
けれど、成長したオリジナルの登場人物たちに励まされました。あのまま埋もれさすわけにはいかなったのです。
これでよかった、と今は思い、勇気を出して出版して下さった版元、担当者に感謝しています。

最後に・・

    (略)

<赤い実>・・・よく気がついたね!!
旧小説版を読み返して<あの一文>には、びっくりしました。

そうなの・・原点はキャンディだったのね・・と。

あまりに・・恥ずかしい気もしたので書き変えようかとも思いましたが・・でも、感謝しつつ残しました。原点は大事です。

いろいろな思いのこもった仕事でした。

みなさま、暖かい視点をありがとう。大事に胸にしましました。
2003年ブッキング(復刊コム)版の該当箇所。 
キャンディはアンソニーから、ばらのはちを受け取ると、ため息をついた。夢のようにあわいピンク色のつぼみ……。ひらくとき、花の中からどんな夢がこぼれ落ちてくるのだろう。
「このばらの名前、いままで、なんてつけようかって、ずいぶん考えていたんだけど……やっと決まった……。」
アンソニーはシーザーの鼻をなでながら、静かな声でいった。
「なんて名前なの、アンソニー。」
「スイート・キャンディ。」
つぶやくようにアンソニーがそういったとたん、キャンディの胸の中で赤い実がはじけた。二人は、しばらくの間、はずかしそうに見つめあっていた。

名木田恵子(著)『小説 キャンディ・キャンディ』(ブッキング 2003年9月刊)P98より引用
2010年祥伝社版の該当箇所
差し出された淡いピンクのばらの鉢を、キャンディはドキドキしながら受け取った。
つぼみが一輪、恥じらうようにふくらみかけている。
「このばら……ぼくが交配した新種なんだ……何度も失敗して、やっと」
「そんな大事なばらを、わたしに?」
キャンディの胸がつまった。
「このばらの名前、なんてつけようかって、ずっと考えていたんだけど。……今、やっと、決まった」
アンソニーは、シーザーの鼻をなでながら、静かな声で言った。
「なんていう名前なの?アンソニー」
「スウィート・キャンディ」
つぶやくようにそう言うと、アンソニーは、恥ずかしそうにキャンディの方を向いた。
(スウィート・キャンディ……)
その瞬間、キャンディの胸の奥で赤い実がはじけた。
二人はしばらくの間、黙ったまま、キラキラ光る瞳で見つめ合っていた。

名木田恵子(著)『小説 キャンディ・キャンディ FINAL STORY 上』(祥伝社 2010年11月刊)P121より引用
ハーゲンダッツ・クリスピーサンド『赤い実はじけた 恋の味 ~マスカルポーネ&ベリー~』発売記念MV「はじめてのチュウ meets『赤い実はじけた』」​(漫画:横槍メンゴ)
09

名木田恵子(水木杏子)の新書版『小説キャンディ・キャンディ』あとがき

 最後に、講談社版『小説キャンディ・キャンディ : 永遠のラブストーリー』 から、名木田恵子(水木杏子)のあとがきを引用する。
(略)
    キャンディの物語は、マンガ家のいがらしゆみこさんと編集の清水さん(当時)と会ったとき、生まれました。
    ああ、もう十五年ぐらいまえの話です。
    みんなの中には、まだ生まれてない人もいるかもね。
    東京・高田馬場の喫茶店。
    おゆみ先生は、いまと変わらないハスキーな声で、ニコニコ笑っていました。
    おゆみ先生とわたしは、趣味なんかも、まるでちがっていたのに(たとえば、おゆみ先生はモデルガンなんて集めてて、わたしはオルゴールにシール、ってね)、一目で大好きになって、輝ける友情は、ずっとつづいています。
    あのね、
    わたしたちって、パパとママ、"夫婦"なんだもん。
    同姓で夫婦っておかしいでしょう!?
    でも、キャンディに関しては、そうなのです。
    どちらが欠けても、この物語は生まれなかったのだから。
    だから、わたしは、おゆみ先生に"特別"な気持ちがあるのよ。
    そういった、やさしい相手とめぐりあえたからこそ、キャンディは、すくすくと育ってくれたのだと思います。
(略)

1990年2月10日発行『キャンディ・キャンディ:永遠のラブストーリー』第一巻(講談社刊)あとがき より
オマケ

ファンレターのあつかいについて

名木田恵子公認ファンサイト掲示板において、「キャンディ・キャンディ」を含むファンレターの取扱いに関する裏話が明かされていたので、引用しておく。
みなさまのお手紙のこと、お詫びなど。 投稿者:名木田恵子 投稿日: 2月20日(水)21時54分06秒
    (略)
ここで、わたしにお手紙をくださったのに、お返事を書けた人と、書けなかった人がいらして・・・書けなかったひとについては、ほんとうに申し訳なく思っています。
   
読者からのお手紙についての<裏話>をしてしまうと・・・・
まず、出版社に届きます。
出版社には<お手紙係>はいないので、担当があずかります。
担当さんの時間があったら、送って下さいますが、ちょっと忙しかったりすると・・・
もう何ヶ月、驚く時は何年!もわたしの元に届かない時があります。
(永遠に届かないことも・・・でも、だいたいは届くと思うので担当さんを信頼しています
    担当さんたちはたいへんおいそがしいので仕方ないの。)

そんなわけで・・・やっとわたしの元に届いても・・・
今度は、私自身がお返事が書ける状態の時とそうでない時があるのです。
そういったタイミングでお返事が届いたり、届かなかったり・・・・
でも、お手紙をくださった方達はそれぞれ返事を待っていて下さるのですものね。

ほんとうに、ごめんなさいね・・・。

このごろは、出版社がお手紙をFAXで送ってさることも多いのです。
そうすると、住所も分からないのね。
担当はすてきなお手紙ははやく読ませたい、というやさしいお気持ちなのですが・・・

きょうも、<ミラクルの招待状>を読んでくれた小学生からのお手紙をFAXでいただきました
なんだか長い病だとかで、家族に負担をかけることを考え、居場所がないと思っていた時<花野子ちゃん>のことを読んで生きていてもいい、と思ってくださったようで感激しました。

みなさまのおたよりは13年前から全部とってあります。
なにしろ、キャンディのファンレターも26年間ダンボール五箱!にいれてとってあるのよ。
ほんとうに、なんという励ましでしょう。
それなのに、お返事も出さず、なんて恩知らずでしょうね!
気をつけなくては!

お返事が届かなかったみなさまのお便りも
わたしの元に宝物として大切に眠っています。

ほんとうに、ありがとう!
その気持ちだけでもお伝えしたくて・・・・

    (略)

名木田恵子公認ファンサイト「妖精村」掲示板より
参考:『キャンディ・キャンディ』の設定やキャラクターに関する原作者発言を含む記事
  • 『キャンディ・キャンディ』の最終回と「二つのバッヂ」事件
  • 『キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から』について
  • 『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』に関する著者一問一答
  • ステアの戦死とアンソニーの「バラの死」​
  • 『キャンディ・キャンディ』の年表とキャラクターの生年月日

キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から

2/2/2001

 
1996年に情報センター出版局から刊行された『キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から』(著者・近藤恵/川上千恵子)という書籍に関して、掲載情報(アードレー家系図など)を公式設定と誤解したまま広めている人がいるようなので、原著作者・水木杏子氏の旧公式サイト掲示板発言を再掲載します。
<CANDY・CANDY・BOX>について ◆ 水木杏子 2001-02-02 (Fri) 00:12:59

(略)
この本は違法ではなく、ちゃんと水木の許可を取っています。
ただし、<内容>については<関与>していないと本の冒頭に明記してあると思います。
何故、そうなったのか。お話しておきますね。

この本の許可願いが来たときにはすでに<同人雑誌>として完成していました。
それを拝見したときの、わたしの驚きはかなり深いもので、とうてい読み通す事はできませんでした。なぜならば、書かれている事はすべて<物語>を踏まえているのに、そこにはまるで<原作者>の存在はなかったからです。
小学生のころからファンだったという彼女たちに「原作者のことはどう思っていたの?」    と率直な疑問を投げかけました。
「原作者がいることは知っていましたが、念頭にありませんでした」というのが また率直なお答えでした。今思うと、彼女たちのうちのお一人が<漫画家>と親しかったことも原因だったのかもしれません。
この素直なファンの感想にもたいへん衝撃をうけましたが、その直後にこの事件が起こったとき、その意見を何回も思い出し(なるほど・・・)と哀しい納得ができました。
聡明な女性に成長した彼女たちですが<同人誌>を<商業誌>として出版すること になってはじめて<原作者>を意識したようです。
ぱらぱらと拝見した限りでは、口出ししたらきりがないようでした。
担当編集者も誠実な人で、ゲラに至るまで彼女たちは見せてくれ、変更も可能でしたがきちんとは見てはおりません、というよりとうとう直視する事ができず今に至っています。
ですからこの本の内容について質問をうけてもお答えできないのです。
(ただ、目についたことで気になった事は直していただきました。)
どうあれ、あれだけのことをまとめるのはたいへんだったことと、ねぎらう気持ちで許可はしました。

<彼女たち>にはたいへん可哀相な事をしてしまいましたが、これがわたしのあの本 に対して感想と評価です。 
情報センター出版局『キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から』(著者・近藤恵/川上千恵子)
情報センター出版局『キャンディ・キャンディボックス : なつかしいポニーの丘から』(著者・近藤恵/川上千恵子) P20
※この『CANDY CANDY BOX』という書籍は1994年に音楽系ミニコミ誌『Vanda』の別冊として頒布された『君の名はスイート・キャンディ』をベースに商業出版された。この書籍内では「(C)Yumiko Igarashi/Kyoko Mizuki」という、片方が雑誌編集長、もう片方が学芸員という著者二名の経歴からは考えられない非常識かつ無礼な著作権者表記がされている。
01

アードレー一族家系図(原作者・水木杏子公式設定版)

近藤恵・川上千恵子『キャンディ・キャンディ ボックス : なつかしいポニーの丘から』情報センター出版局
アードレー一族の系図は『なかよし』1977年6月号付録「なかよしまんが新聞」掲載のものが原著作者の公式設定であり、『キャンディ・キャンディBOX』記載の家系図はファンの妄想に過ぎませんのでご注意ください。

いうまでもない事ですが、当該書籍に掲載されているキャンディス・ホワイト・アードレーの出自に関する推理も執筆者の妄想に過ぎず、「原作者の用意した裏設定」などではありません。
​
自分なりに物語を解釈するのは勝手ですが
、それが公式設定であるかのようにSNSなどでデマを流布するのはやめましょう。
原著作者公式設定では
​「エルロイ大伯母さま」、アルバートの父「ウィリアム・Ⅽ・アードレー」、ステアとアーチーの祖母「ジャネット」がきょうだい。
ウィリアム・Ⅽ・アードレーの子供が「ローズマリー」と年の離れた弟「ウィリアム・アルバート」、ジャネットの娘が「ジャニス」。
ローズマリーと駆け落ち同然で結婚した「ヴィンセント・ブラウン」氏との間の息子が「アンソニー」。
「ジャニス」とコーンウェル氏との間の息子たちが「アリステア」と「アーチー」
アンソニーから見てアルバートは大叔父ではなく叔父、アンソニーとステア&アーチーは従兄弟ではなく又従兄弟にあたる。

ウィリアム・Ⅽの晩年に生まれた息子であるウィリアム・アルバートを除けばアードレー本家は女ばかりで、事業に差支えが出るのを恐れてウィリアム・Aをウィリアム・Ⅽと誤認させるようにしていた……ということらしい(一族の年長者は当然承知しているが、「外様」であるラガン一家はそのあたりの事情をまったく知らされていない)。
02

ニールとイライザのラガン兄妹

エルロイには子がなく、ニールとイライザはエルロイの夫「ブリアン」の縁者「サラ」が「レイモンド・ラガン」に嫁いで生まれた子供だが、水木杏子旧公式サイト内のエッセイ「キャンディとであったころ」によると、サラ・ラガンには出生の秘密があり、それがニールとイライザの性格に影響しているとの事。

参考:原作者公認ファンサイトMisaki's Candy Candy内「キャンディとであったころ」アーカイブ
エピソード5・ニールandイライザ
エピソード6・屋根裏部屋から

​ニールとイライザがアードレー家の紋章を知らないのは不自然ではと思ったが、エルロイが(不憫に思って?)サラ母子に目をかけてやっているだけで、ラガン家はアードレー家とは血縁がなく、分家ですらないのならば一応納得できる。ニールが本編内で一度もアードレー氏族のタータンを着ていないのもその為だろう。ただしラガン家の微妙なポジションが「サラ・ラガンの出生の秘密」に起因し、それがアードレー家との何らかの血縁関係という可能性もある。
03

ブラウン氏とラガン氏のフルネーム

アンソニー父とラガン氏のファーストネームについては、名木田恵子公認ファンサイト掲示板で明かされている。
なんだか気持のいい風が・・
 投稿者:名木田恵子  投稿日:2010年10月16日(土)21時21分12秒
(略)
Final 版を書いて、ほっとしたことの一つは、今まで失礼していたポニー先生、レイン先生、ジョルジュたちにやっとフルネームを与えられたことでした。
アニメ化のときも聞かれて、「そのうちに・・」とかいっているうちに、終わってしまいました。必要なかったのね。
でも・・やはり、申し訳ないなあ・・と、ずっと思っていたの。今回はもちろん全員に。(スチュワートやメアリも・・そうそう、クッキーの本名も!)

困ったのは、アンソニーのお父さま。もともと決まった名前のある人たちがいて、古いノートに書いてあったのに・・またもや、見失って(我が家くらいさまざまなものが迷子になるうちは少ないと思う)しかたなく仮に(記憶にあった)“レイモンド”に。
でも、よかった!書いている間にノートが出現。見ると“ヴィンセント・ブラウン”でした!
“レイモンド”になんとなく違和感があったのは・・
「えっ!? レイモンド・ラガン!?」
・・ニールとイライザのお父さまの名前でした。
なんで、そっちが記憶に残っていたのでしょう・・??
(略)

名木田恵子公認ファンサイト妖精村掲示板より
04

アーチーボルト・コーンウェルとイライザ・ラガンの初期設定とステアの誕生日

余談だが、2003年の小説復刊時に「アーチー」の連載前段階の名前は「アルトルド」、「イライザ」は「イザベル」であったとも明かされている。
きのう! 書庫の整理をしていて古いふる~い漫画のゲラ<悪魔のメルヘン>(まんが 丸山佳さん・・原案・わたし となっている)と、<星がでるまで>(漫画、森谷幸子 原作 わたし)の間からすっかり忘れていたノートが出てきました。 (プロットメモのノートは”事件”に提出しましたが・・このノートの存在は忘れていたの・・・)

それは、キャンディを書く前のノート・・・
タイトル案(やっぱり わたしの案でした・・)やペンネーム案・・北原柊子、とか水木茂恵とか・・むろん<森影らと>も!
どれも使わなかったわね。

おかしかったのはね・・・<アルトルド>!・・・だあれ???
と思ったら、<アリステアの弟>とありました。
おおっ! アーチー! もしかして、あなたは<アルトルド!>・・「アル」って呼ばれていたかもしれないのね!

​名木田恵子公認ファンサイト妖精村10月のNews Archiveより
豪雨お見舞い・・・ 投稿者:名木田恵子 投稿日:10月14日(火)16時44分46秒

アルトラドにはじぶんでも驚くくらい記憶がありません・・??
今になってノートを見て<伝説の勇者っぽい名前>だなあ、とひとりで笑ってしまいました。
そうそう、はじめアーチーはおしゃれだけれど、もっと骨っぽいイメージでした。
アーチーの魅力は描ききれず、彼には申し訳なく思っています。
(略)

名木田恵子公認ファンサイト妖精村掲示板より
そのノートには、アードレー家の家計図のメモもあって(物語が始まる前の)
<ナンシー・シャープ??>なんて名前もありました。
おもしろかったのは・・ノートにあった<イザベル>という名前。
どうも、<イライザ>に落ち着く前だったらしいの。これも<イライザ>のほうがぴったりね!

名木田恵子公認ファンサイト妖精村10月のNews Archiveより
尚、なかよしまんが新聞記載データのうち、ステアとアーチーの誕生日が入れ替わっていると原作者公式サイト連載のエッセイ上で申告されている。つまり、アーチーが5月25日、ステアが10月11日生まれというのが正しい誕生日データということになる。

参考:原作者公認ファンサイトMisaki's Candy Candy内「キャンディとであったころ」アーカイブ エピソード6・屋根裏部屋から
05

ジョルジュとローズマリー・ブラウン

また「ジョルジュ」がなぜフランス名なのかについては、水木杏子旧公式サイト内「小窓から」 2001年4月「花いっぱいの小窓~わき役たちの人生」で明かされている。
花いっぱいの小窓 わき役たちの人生
(略)
……<ジョルジュ>についてお話したいと思います。
キャンディの登場人物の名前はイギリス系(イギリスの小説の中から参考にしました)が多いのですが、その中で<ジョルジュ>だけがフランス系の名前です。
彼は……そう、わたしにとって、忠実で信用のおける<僕(しもべ)>の名前はなんとしても<ジョルジュ>でなくてはならなかったのです。
 
わたしが小学生のころです。
理不尽なことで母親に叱られた時、(自分はこのうちの者ではないんだ…)と思うことで思いを鎮めていました。
(わたしは、ほんとうは ”あじさい屋敷”の娘なんだわ…)
わたしはうっとりと、あじさいの花で埋もれた洋館を想像します。古い洋館の名前はその時々によって変わりましたが、いちばんのお気に入りが<あじさい屋敷>でした。
わたしは、心のなかでつぶやきます。
(いまに”あじさい屋敷”からお迎えがくるのよ……お使いの…・)
 
ジョルジュが!
 
そうなのです。<ジョルジュ>はそこから生まれた名前、人物でした。
わたしを迎えにきてくれるはずの(?)<ジョルジュ>はいがらしさんの絵よりもっと年をとって白髪です。笑顔がやさしくて、けれど、よけいなことはいっさい言わない…(そこは同じね)
わたしが成長してからも<ジョルジュ>はいつもわたしを迎えにこようとスタンバイ(?)しているようでした。
あるとき、母にも<ジョルジュの存在>を話しました。
「怒られた時、そんなことを考えていたの?」
母は笑って、それから、ささいないい争いをし、仲直りをした後には
「ジョルジュは迎えにまだこないわねぇ?」
と笑って、わたしをからかうのでした。
「そのうち来るわ!」
わたしも笑って答えます。
「ある日、外で車の止まる音がして、ジョルジュが降りてくるの……”今までこのようなうちでよく我慢なさいました、さあ、あじさい屋敷にお連れいたします”ってね」
「ジョルジュは今まであなたを育てたお礼はしてくれるのでしょうね」
母はおかしそうに笑い、なかなか しっかりしたことを言いました。
わたしは亡くなった母とそんなたわいない会話をして楽しんでいたのです。
 
ジョルジュ……
とうとう迎えに来てはくれなかったけれど、キャンディの物語を書いている時、<忠実なる執事>が現われたとたん、自然にその名前を書き込んでいました。
<ジョルジュ>。
それだけで、あとにはなにも続く名前はありません。結局、つけないまま終わってしまいました。
キャンディのジョルジュは<わたしのジョルジュ>とは少し違います。
彼は<一生の恋>を大切に心に秘めたまま、独身を通します。
ジョルジュの恋のお話は、まだ別の物語ね。
 
ジョルジュだけでなく、キャンディのわき役たちひとりひとりに歩んできた人生があって、思いがあるのです。
ポニー先生、レイン先生は なぜ シスターになったのか…
フラニーの初恋は…
 
<原作>のなかではふれなかった、けれど、わたしの中に埋もれていたそれぞれの人物のサイドストリーをこの事件は思い出させてくれました。
それはね、原作者の趣味よね……登場人物が遊びに来てくれては思い出を勝手に語ってくれる至福の時間……しあわせなひととき…。
それはだれにも侵されません。

​水木杏子旧公式サイト内「小窓から」 2001年4月「花いっぱいの小窓~わき役たちの人生」より
ローズマリーはブラウン氏との大恋愛の末にアードレー家を出たこと、そのかけおちを手助けしたのがジョルジュであること、ジョルジュ自身も孤児であり故ウィリアム・C・アードレーに大恩があること、密かにローズマリーを愛していたこと……などの裏事情は1979年刊行の『小説キャンディ・キャンディ』第3巻で明かされている。
06

スザナ・マーロウとテリュース・G・グランチェスターの年齢

スザナやテリィの年齢についても公認ファンサイト掲示板で回答しているが、あくまで『なかよし』という掲載媒体の都合上の設定年齢であり、厳密にリアリティを考慮した数字ではないらしい。(昭和のロボットアニメでは主人公の設定年齢が18歳上限だったのと同じようなものだろう)
投稿者名: 名木田恵子
投稿日時: 2005年02月10日(木) 14時42分

(略)
スザナの年齢ですが、キャンディよりは年上、テリィよりは年下、と思っていてくださいね。
<なかよし>が低学年むけの雑誌だったために常に読者年齢を意識して(させられて)いました。ぎりぎり17歳。それ以上のヒロインを書くのは<なかよし>ではむずかしい時代でした。
けれど、気持の上では、水木さんはかなり上の設定で登場人物のみんなを見つめていました。

こんなことしかお答えできず、お二人とも、ごめんなさいね・・・。

名木田恵子公認ファンサイト妖精村掲示板より
ハートの小窓のUPなど ◆ 名木田恵子 2002-02-26 (Tue) 22:39:18
(略)
スザナはね、わたしも好きなのです。
想いがとげられない・・・エゴとわかっていても貫きたい・・・
そんな哀しみを込めたのです。

水木杏子(旧)公式サイト内掲示板ガーデンテラスより
ピノキオというピンクの薔薇 ◆ 水木杏子 2002-05-15 (Wed) 21:06:01
(略)
スザナもね、憎まれ役で可哀想でした。
<好きな人のそばにいたい、そのどんな表情もみていたい、たとえその人が別のものを見ていても・・>そんなスザナがわたしも好きです。
(略)
水木杏子(旧)公式サイト掲示板より
テリュース・G・グランチェスターの「G」がミドルネームであるグレアム (Graham)の頭文字であることも『小説キャンディ・キャンディ』で既に明かされているのだが(「グレアム」は母エレノアのつけた名であり、父親の姓を名乗るのを嫌ったテリィは役者として活動する際には「テリユース・グレアム」を名乗っていた)、『CANDY CANDY BOX』では「テリュース=G=グランチェスターの「G」とは何の略なのか?」などというコーナーに面白おかしく1Pを割いている。大ファンといいながら原作者の公式小説を読んでいないのか、存在を知りながらガン無視しているのか……。
07

テリュース=G=グランチェスターと​比村和夫の誕生日

画像
バースディクラブ〈2〉みなりんの巻 (講談社青い鳥文庫) 著・名木田恵子、イラスト・亜月裕
ちなみに名木田恵子氏の児童小説『バースディクラブ(2) みなりんの巻 』(講談社青い鳥文庫 2006年刊)のあとがきp224で、名木田氏は「告白すると、二度ほど、自分の作品のステキな登場人物の少年の誕生日を自分のと重ねてしまう、という罪をおかしてしまいました……。」と書いている。

ポプラ社の児童小説「ふーことユーレイ」シリーズの「比村和夫(ひむらかずお)」は名木田恵子氏と同じ11月28日生まれ(『知りあう前からずっと好き』の巻末でデータ公開)であり、一方の少年が彼であるのは明確だが、もう一方の少年は、「思い入れの深い少年の一人に自分の誕生日のもじりを。」という記述通り、11月28日を少しいじってある。

これについては『バースデイクラブ』刊行当時に名木田恵子公認ファンサイト掲示板上で種明かしされており、11月ではなく「1月28日生まれ」の「テリュース・G・グランチェスター」がもうひとりの「思い入れの深い少年」であり、テリィの血液型と好きな花も名木田氏と同じ「AB型、すみれ」に設定されている。
その他
復刊コムにリクエストしてる人がいるようなので、ついでに書いておきますが、1993年9月にワニブックスから刊行された『キャンディはアルバートさんと結婚したの? : 少女漫画ヒミツ発見 (ISBN: 4847030982)』というのは当時流行していたクッダラナイ非公式の謎本で、公式とは一切かかわりない妄言をテキトーに書き連ねただけのシロモノ。そもそもキャンディに割かれた分量は少なく、様々な有名少女漫画についての与太話をまとめた安易な便乗本です。
参考:『キャンディ・キャンディ』の設定やキャラクターに関する原作者発言を含む記事
  • 『キャンディ・キャンディ』の最終回と「二つのバッヂ」事件​
  • 『小説キャンディ・キャンディFINAL STORY』に関する著者一問一答
  • ステアの戦死とアンソニーの「バラの死」
  • 復刊ドットコム版『小説キャンディ・キャンディ』刊行の経緯
  • 『キャンディ・キャンディ』の年表とキャラクターの生年月日
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